私の中の神亀専務

空っぽの心。

 

ずっと、ずっと感謝の気持ちを直接伝えたかった方がお亡くなりになりました。

 

お葬式に参列したのは初めて。

 

何もわからず、喪服を揃え式場へ。

 

非常識を常識に変えた人。

 

今はよく聞く、

『純米』

 

戦争が起こり『純米』は姿を消していたが、それを復活させた人。

 

“闘う 純米酒

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純米と私との出会い。
それは10年前にさかのぼる。

 

銀座で仕事を終えた私は以前から気になっていた日本酒を沢山揃えた割烹居酒屋に1人ふらっと入った。

 

カウンターが奥まで伸びる店内。

 

壁に貼られた『ふぐ刺し』や『天然ぶりしゃぶ』などの魚を中心とした私好みの肴の文字が目に飛び込んでくる。

 

カウンターに座ると板前達が勢いよく、

 

『いらっしゃい!』

 

ここの酒の品揃えは抜群だった。

 

私は足繁く通い、板前達とも仲良くなり、メニューの端から端まですべて呑んだある日、

 

そこに自分の好みを見つけた。

 

それが“純米酒”だ。

 

値段の高い酒が美味しいのではないかと呑み漁ったが、大吟醸では無く、私のこの舌は『純米』を選んだ。

 

それが純米酒を呑むきっかけ。

 

その後、39歳で友人に連れて行ってもらった北新地の店。

 

そこでにごりの燗酒に出会った。

 

生肉と温かいにごりの燗、今まで体験した事の無い心地よさ、旨さ、

 

そこで私は恋に落ちた。

 

よし、この人と結婚しよう。

 

でも結婚相手はどんな人だろう。

 

友人より紹介してもらった、習志野の酒屋さん。M氏を通じて、純米燗酒の世界を数年Rendez-vous.

 

結婚って、いいとこばかりじゃ無いでしょ。

好き!大好き!

今日は好き、明日は分からない。

 

好きが加速する時は何も見えなくなるけど、祭りの後の事を考えて、業界の人達、日本酒と日本人の関係、日本酒と世界情勢、楽しいとこ、不安材料、様々な角度から見た。

 

ある日、足利にある鑁阿寺でのイベントへ誘われ行ってみた。

 

それは“全量純米を目指す加盟蔵”と地元の飲食店が神社境内で、純米酒と相性抜群の肴を楽しむ野外イベントだった。

 

そこに神亀専務がいらっしゃった。

 

何度かはお目にかかっているが、気安く話しかけられない存在。

 

そこで専務に、

 

専務『お前いつ店やるんだよ』

私『まだ勉強足りないです…』

専務『勉強なんて店やってするんだよ‼︎』

 

え〜〜〜〜〜〜っ。笑

 

私は専務の言葉に、力を頂き、

 

よし!

結婚するか‼︎

 

それから一気に加速し、2015年2月、神田で福33は産声を上げた。

 

思いもよらぬ程沢山のお客様にご来店頂き、お花やお祝い、嬉しいを味わうどころか目が回る忙しさ(実際目が回っていた)の中、寝る時間も無い。辛かった。キツかった。やりたくない。起きたく無い。様々な気持ちが一気に押し寄せるが時間は待ってはくれない。

 

ぼぉっとは出来ない。

 

お客様の期待を裏切ってはならない。

 

お店を始めた責任が重くのしかかった。

 

頂いたお花の中に、神亀専務から頂いたお花があった。

 

お礼…

したかったのですが。。。。。

実は専務にも誰にもお礼していないのです。

 

御免なさい。

 

お世話になったり、ご来店頂いたり、何方にもお礼をしておりません。。。

 

この場をお借りして、今の心境を伝えさせて頂きます。

 

今までのご無礼をどうかお許しください。

無知な私が今日までやって来れましたのは沢山の方々に支えて頂いたからです。

これからは今まで頂いたご恩をお返し出来るよう精進致します。

 

皆様、ありがとうございます。

 

本当にありがとうございます。

 

 


4月27日、私は棺桶に眠る専務に何度も何度も詫び、心からありがとうの言葉を伝えました。

 

本当は直接伝えたかった。

お店が落ち着いたら会いに行くと決めていたのです。。。

 

純米酒が与えてくれた沢山のご縁。

 

40歳目前に思った。
無茶苦茶な自分の生き方を変えなきゃ。
本当にやりたい事をして、それを共有出来る仲間が欲しい。心より信頼出来る人達の中に居たい。

 

40歳を過ぎても常識の無い自分に、毎日自分と向き合える環境がある。

 

それが私の純米酒

 

専務ありがとうございます。

 

棺桶に横たわった専務はまだ生きてるみたいでした。

 

専務、いつか私のお燗酒召し上がってくださいね。

 

それまで沢山勉強します。
頑張りますよ‼︎

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